乳酸菌は、細菌の一種です。2~4㎛という非常に小さな菌で、顕微鏡でしか見ることができない微生物に属しています。
糖類を材料にして乳酸を作り出し、その乳酸が腸内にある悪玉菌の繁殖を抑えています。
細菌と言うと有害な作用をもたらす悪いイメージを連想される方が多いですが、細菌の中には素材の香りや味を豊かにしたり、体に良い影響を与えてくれるものもいるのです。
その代表が乳酸菌です。
乳酸菌は「発酵乳用乳酸菌」と「腸管系(植物系)乳酸菌」とに大別されますが、これを細かく分類すると350以上もの種類が存在しています。それぞれに特徴があり、用途によって使い分けられています。
バターやチーズ、漬物、ワイン、味噌など私たちの周りには乳酸菌を使った様々な食品がありますが、それぞれに合った乳酸菌を使い分け、あるいは優良な菌を厳選して使用し、美味しい食品が出来上がるのです。
健康な人間の体の中には、胃で1億~100億個、小腸で100億~1000億個、大腸では約1兆個もの乳酸菌が存在しています。
重さにすると約1kgにもなり、第3の臓器と言われるほど非常に重要な役割を担っています。
乳酸菌などの善玉菌は、糖質を分解して乳酸や酢酸を作ります。
悪玉菌は酸性の環境が苦手のため、乳酸や酢酸が沢山作られれば作られるほど悪玉菌の働きが弱まっていきます。
また、体外から入ってきた病原菌やウイルスもこの酸性の環境が苦手であることから、病気の予防としても非常に役立っているのです。
食品に外のある菌が付着していたり、腐った部分があったとしても、腸の中に善玉菌がたくさんいれば病気にならない、あるいは軽症で済むのです。
また、乳酸菌は大腸の働きを活発にしてくれる役割もあります。
腸は「蠕動運動」というくねくねとした動きをして、便を肛門へと送り出しています。
悪玉菌が増えるとこの蠕動運動が低下し、便が送り出しづらくなるために便秘などのトラブルへと発展するのです。
便はアンモニアなどの毒素を出し、また悪玉菌を増やして腸内環境を悪化させてしまうため、日ごろから乳酸菌を積極的に摂取することで腸内環境を整えておく必要があります。
乳酸菌は私たちの身近に存在しており、それを含む食品は多くあります。
それにも関わらず、現代人は乳酸菌不足に陥っている人がほとんどなのです。
では、なぜ乳酸菌が不足するような状態になってしまうのでしょうか。
①食品の処理
本来、人間をはじめとする動物は自然の食材を生で食べることで乳酸菌を摂取してきました。
しかし、現代では植物の保存期間や見栄えの為に加熱殺菌処理や防腐剤などの添加物が使用され、このときに乳酸菌が死滅してしまうため、摂取できる乳酸菌の量が減ってしまったのです。
②発酵食品を食べない
昔から乳酸菌は重宝されてきましたが、その目的は「乳酸菌を使用して発酵させることにより、食品の腐敗を防ぐ」ことにありました。
今は冷蔵庫・冷凍庫などの電化製品の普及や化学製品の進歩によって発酵させずとも長期保存が可能な環境となりました。
そのため、以前に比べて乳酸菌を口にする機会が減少してしまったのです。
③食生活の乱れ
腸内の悪玉菌は、タンパク質や脂質などを栄養にします。
粗食といわれた日本ならではの食事から欧米化に変わった現代の食事は、この悪玉菌が好む食材を多く使用しているため、悪玉菌の増加を助長しています。
また、発酵食品を摂取する機会が減ってしまったことから、悪玉菌が増え乳酸菌が減るという負のスパイラルに陥っているのです。
④ストレスの増加
最近の研究では、過度なストレスが善玉菌の働きを弱め、悪玉菌の多い腸内環境を作り上げる原因になるということが分かりました。
特に、人はストレスへの耐性が年々徐々に弱まっており、ストレスに対して敏感になっていることから、腸内環境の悪化へとつながっているのです。